身近なボランティアで防災のまちづくりへ 多様な人が支える地域の備え、経験やつながりを活かす一歩に

2026年9月9日(水)

災害への備えは、特別な知識や大きな力を持つ人だけのものではありません。いざという時に声をかけ合える地域の関係づくりや、有事の際に地域を支えるボランティアの存在は、大きな力になります。今回は、文京区で防災活動に取り組むボランティア団体「ご近所 de BOSAI」を取材。地域住民や医療関係者、学生など、さまざまな世代や立場の人が関わる身近な防災ボランティアの現場を紹介します。

地震から命守ろう 文京区で防災活動

7月のある日曜日の午後。文京区立誠之小学校の体育館で、地域の防災啓発活動団体「ご近所 de BOSAI」の「みんなで学べるはじめての防災講座」がありました。代表の北尾昭子さん(61)とともに運営に当たるメンバーは全員ボランティア。この日は、近隣の住民や区内の大学に通う学生ら約15人が集まりました。

講座は午後0時半からでしたが、1時間以上前には集合。小学校の剣道クラブの稽古が終わるとともに、30分ほどで会場を設営しました。机2台に椅子8脚の班を4つ作り、数種類の資料やチラシを各席に用意。ほかにもプロジェクターを設置して、資料を投影するとともに、聴覚障がいのある参加者のため、手話通訳士を配置したほか、音声の文字転換アプリを使い、マイクに入る言葉をリアルタイムでスクリーンに映るようにしました。

設営準備をする北尾さん(左)とボランティア学生

「ご近所de BOSAI」は東日本大震災をきっかけに結成されました。大地震が起きた時、国や自治体の救助が始まるまでの「初動」で、住民が協力して命を守る行動を取ることの重要性を広める活動をしています。障がい者や日本語が苦手な外国ルーツの人々が、きちんと情報を集め、避難行動を取れるようにすることを大事にしているのも特徴です。

「もしも」の時の初動を支えるために、普段からご近所同士のつながりを作り、助け合える地域づくりに取り組むことが大切だというのが、団体の事業テーマです。毎月のようにイベントを開いたり、LINEのオープンチャット機能を使ったコミュニティーづくりをしたりしています。

地域の病院も一緒に活動

この日の防災講座には、近隣の町内会長や親子連れ、お年寄りなど約20人が集まりました。その中には母語が中国語の3人も参加しました。「心肺蘇生」をテーマに、文京区内にある日本医科大学付属病院・高度救命救急センターの救急救命士・須賀涼太郎さんが胸骨圧迫のやり方やAEDの使用方法について指導しました。同病院の救急看護師と、同じく文京区内にある東京科学大学病院救命救急センターの救急看護認定看護師もボランティアで加わりました。

講演する救急救命士の須賀さん

須賀さんは、スクリーンに資料を映しながら、時にクイズ形式も取り入れて、どのような場合に胸骨圧迫をするのかなどを説明しました。引き続き、各班ごとに行った胸骨圧迫やAEDの練習では、看護師の皆さんらが訓練用マネキンを使って実演し、参加者も一人ずつ何度も練習しました。被災した場合に備え、自身の名前や住所、家族の名前・電話番号などを記入する「パーソナルカード」も作成。2時間以上にわたる講座は、ボランティアスタッフの迅速な準備、熱意あふれる運営で無事終了。参加者は多くの知識を得たほか、顔見知りの「ご近所さん」も作り、満足そうに帰っていきました。

胸骨圧迫の訓練を受ける参加者

「いいアイデアくれる」 シニアも参加を

2年前から運営ボランティアをしている石川さとさん(27)は、ろう者として「ご近所de BOSAI」の活動に積極的に関わっています。耳が不自由だと、様々な情報を得ることが難しいだけでなく、もともと近所との交流が少ないことが多いと言います。「災害への不安は大きいです。ボランティアに加わることで、ろう・難聴者の防災を充実させる環境づくりを進められることにやりがいを感じます」

手話で自己紹介する石川さん

東洋大学3年の須田瑞月さん(20)は、去年、北尾さんと知り合いました。以来、大学公認のボランティアサークル「学ボラ」の友人と、2~3カ月に1回参加しています。「大学は文京区内にあっても、地域の人とのつながりは薄いのが実情です。高齢者や外国ルーツの人などと話をする機会を持てるのが魅力です」と話します。

参加者に説明をする須田さん

北尾さんによりますと、今回はシニア・プレシニア世代は参加していませんでしたが、古くからの中心メンバーに大活躍してくれた人が数人いるそうです。ただ、亡くなったり病気をしたりで先細りの状態とのことです。
シニア世代は地域に知り合いが多く、仕事などを通じて得た知恵や経験が豊富だと言います。
世代間での感覚の違いもあり、シニア世代も参加することで、若い世代だけでは気づきにくい視点が生まれ、活動の幅も広がります。こうした多世代で関わる活動の可能性を感じさせる例として、地域で長年、寿司店や鮮魚店をやっていたメンバーのおかげで、発足間もない時の催しにたくさんの人を呼んできてくれたり、町会掲示板へチラシを貼ってくれたりしました。
今年3月の大がかりなイベントの際には、100年活躍ナビで募集したところ、30人ほどのシニア世代が参加したそうです。
「多世代が入っている方がおもしろいアイデアも出てくるし、真に行き届いた活動ができます」と北尾さん。シニア世代に頼みたい具体的な活動としては、役所への報告書などの文章作成や、イベントでの動画撮影だそうです。「近隣のシニアの皆さん、お仲間になって下さい」と呼びかけていました。

まとめ

防災イベントを通じて、「いざ」という時のために近所同士のつながりを作り、平時は助け合いの心あふれる街を作る――「ご近所 de BOSAI」の皆さんの願いは確実に広がっています。自身のボランティア参加が、自分の住む地域をより良くすることにつながるなら、それは大きなやりがいになるのではないでしょうか。100年活躍ナビでは、ほかにも「ご近所」で参加できるボランティアを募集しています。自分に合った活動を探してみませんか。

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